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デジタル・プラットフォーマーを巡る法的課題と対応


デジタル・プラットフォーマーとは何か?

 インターネットの普及を通じて、デジタル・プラットフォーム(以下「DPF」)と呼ばれるICT やデータを活用して第三者に「場」を運営提供するサービスが拡大しています。DPFには、オンライン・ショッピング・モール、インターネット・オークション、オンライン・フリーマーケット、アプリケーション・マーケット、検索サービス、コンテンツ(映像、動画、音楽、電子書籍等)配信サービス、予約サービス、シェアリングエコノミー・プラットフォーム、SNS、動画共有サービス、電子決済サービス等様々なものが含まれます。これらのDPFを運営する事業者は、一般的に、「デジタル・プラットフォーマー」(「DPF提供者」)と呼ばれます。

DPFがもたらす恩恵としてのイノベーションの促進、コロナ危機への対応  DPF提供者は革新的なビジネス等を生み出し続けるイノベーションの担い手となっています。DPFの恩恵として、中小企業を含む事業者にとっては、市場へのアクセスの可能性を飛躍的に高まり、消費者にとっては、その便益向上にもつながります 。特に新型コロナウイルスの感染拡大の懸念が続く状況において、DPFを活用したオンラインでの取引は、新しい生活様式の実践のためにも、欠かせないものとなっています。

DPFの課題としての不公正取引、プライバシーその他の人権への影響  一方、複数の利用者層が存在する多面市場を担うDPFは、ネットワーク効果、低廉な限界費用、規模の経済等の特性を通じて拡大し、独占化・寡占化が進みやすい状況にあります。そのため、DPF提供者は、利用者である事業者や消費者との関係で、不公正な取引慣行や優越的な地位の濫用など独占禁止法の抵触の問題が生じやすいといえます 。  また、DPFの不透明な仕組みゆえに、利用者その他の関係者に対するプライバシー侵害その他の人権への負の影響も懸念されています。また、利用者などの個人情報がその意に反する形で不当に取得・利用されプライバシーの侵害が生じる危険性やDPFが活用するAIのアルゴリズム(手順)のバイアスが差別を助長する危険性が懸念されています。さらに、ウーバーイーツ配達員のように、DPFを通じて単発の仕事を引き受ける「ギグワーカー」という新しい働き方が生まれているところ、これらの者は、一般的に自営業者とみなされ、労働者としての権利が保障されず、最低賃金以下の収入しか得られない不安定な立場に置かれているといった問題も生じています 。

デジタル・プラットフォーマー取引透明化法の成立の意義と課題

 上記のようなDPFの恩恵を促進しつつ課題に対応するために、国内外でデジタル市場のルール整備が進められているところ、我が国においても、2020年5月、DPF提供者による利用事業者との関係での不公正取引を未然に防止するためのルールとして、デジタル・プラットフォーマー取引透明化法 (「DPF法」)が成立しました。  会社法務A2Z(第一法規)の2020年8月号<Zoom Up!特別解説>で掲載された拙稿「デジタル・プラットフォーマーを巡る法的課題とその対応 ─デジタル・プラットフォーマー取引透明化法の実務影響を中心に」は、DPF法を中心に、DPFに関する課題対応に向けたルール整備の状況とその課題を、先行してルール整備が進むEUとの比較も交えながら整理しています。その上で、当職のDPF提供者及びDPF利用事業者双方のサポートの経験もふまえて、それぞれの立場においての課題解決のための留意点を説明しています。

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