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海外贈賄防止対策の強化


海外贈収賄問題は、企業価値の毀損に直結する重大なリスクとなっています。

 現在、米国FCPA・英国UKBAなどの域外適用、日本の不正競争防止法における外国公務員贈賄罪、進出先の新興国・途上国における贈収賄規制など、世界各国で海外贈賄防止規制やその執行が急速に強化されています。

 このような法令違反による処罰のリスクに加えて、海外贈賄に関与した企業には、公共事業への入札参加資格の停止措置、取引先・金融機関からの取引解除・停止、投資対象銘柄からの除外・株価下落、メディア・NGOからの社会的な批判など、様々な経済的損害が生じる可能性があります。

 特に法の支配が確立していない新興国・途上国における贈賄への関与は,相手国政府による規制の適正な執行をゆがめ,当該国の社会全体の腐敗を助長することに加え,環境・労働・人権に関する問題をも悪化させることが懸念されております。贈賄問題の発覚は、企業のレピュテーションを毀損する危険性もあります。

 このような状況下で、企業には、海外贈賄防止対策を強化することが求められています。

 海外贈賄問題が日本企業にとって企業価値の毀損に直結する重大なリスクとなっていることを背景として、2015年7月、経済産業省の外国公務員贈賄防止指針が改訂されました。また、海外贈賄防止は、企業がその社会的責任(CSR: Corporate Social Responsibility)や人権尊重責任を果たすに当たっても不可欠な取組の一つとなっています。

 このような状況を受け、日弁連は、2016年7月、経済産業省の指針を補完する形で、日本企業及び日本企業に助言を行う弁護士を対象に、海外贈賄防止を推進する上での実務指針に関する現時点でのベスト・プラクティスとして、「海外贈賄防止ガイダンス(手引)」を取りまとめています。

 当職も、CSRと内部統制PTの副座長として、同ガイダンスの取りまとめに関与させていただきました。

 日弁連「海外贈賄防止ガイダン ス(手引)」の策定や監修に関わった弁護士や研究者を中心に設立された独立専門家グループです。

 ABCJは、以下の3つの目標を掲げて、日弁連ガイダンスの普及を含む様々な活動に関わっています。

  • 腐敗と闘うための武器を提供する

  • 海外贈賄の闇に光を照らす

  • 腐敗を撲滅するための連携を促す

 当職も、ABCJの委員・事務局を務めさせていただいています。

​ 現在、贈賄に関するリスクが、企業の資本コスト・企業価値に与える影響、ESG(環 境・社会・ガバナンス)に与える影響の双方の観点から、重要性(マテリアリティ)を増しています。また、贈賄への関与はその発覚を免れるために不適切な会計処理を助長 し、企業の財務情報の信頼性に疑義を生じさせる危険性もあります。

 このような状況をふまえ、「贈賄防止アセスメントツール」は、機関投資家と投資先企業との間の贈賄防止強化に向けたエンゲージメント・ 対話を促進し、かつ企業の透明性と持続可能性を高める観点から策定されたものです。

 また、「腐敗防止強化のための東京原則」は、賛同企業に対し、贈賄防止アセスメントツールなどを活用しながら腐敗防止に向けた取組状況について可能な範囲で積極的に開示し, 投資家をはじめとするステークホルダーとの建設的な対話に努めることを求めるものです。

 当職も、これらのツール・原則の執筆・監修を担当させていただきました。

<関連論稿>

  • 「日弁連海外贈賄防止ガイダンス(手引)の解説 第1回 序論―ガイダンスの意義と活用方法」(NBL1081号、2016年)」

  • 「中小企業の海外展開における贈賄防止対策の強化」(会社法務A2Z 2016年11月号特別寄稿)

  • 「経産省指針改訂をふまえた海外贈賄防止対策の強化」(ビジネス法務2016年1月号特集)

  • 「海外贈賄リスク対処のための法的技術とその限界を踏まえた実務対応」(NBL1039号 共著)

  • ”The Japanese Anti-Bribery Landscape and Collective Actions - Bar Association Guidance and Beyond” (IACAlumnus2016年12月号特集、International Anti Corruption Academy 共著)

  • 「ESG課題としての海外贈賄問題と企業の対処策」(QUICK ESG研究所ウェブサイト 2017年3月)

  • その他関連セミナー・講演・研修多数。


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