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SDGs/ESG経営の鍵となるルール活用戦略ーステークホルダー資本主義の実践のために

更新日:5月5日



ステークホルダー資本主義時代に問われるSDGs/ESG経営の「質」

 現在、企業実務においてSDGs(持続可能な開発目標)ESG(環境・社会・ガバナンス)投融資が普及する一方で、企業イメージを上げるために偽装を行う「SDGs/ESGウォッシュ」ではないかという懸念や批判も国内外で上がっています。
 世界は今、気候変動・コロナという2つの危機に直面し、貧富の格差が拡大し社会が分断され、各地で紛争が生じています。不確実性が高まる社会で企業のパーパス(存在意義)が問われる中「ステークホルダー資本主義」 が支持を拡大しており、企業には、いかにステーク ホルダーの利益に配慮しながら環境・社会課題を解決できるかが問われています。一方で、社会が急速に変化する中で、企業も生き残りをかけて自社を持続可能な組織に変革し、企業価値を向上することも求められています。
 このように、企業には、環境・社会課題の解決企業価値の向上という企業に問われている2つの目標の達成をいかに両立させ、真の意味で持続可能性(サステナビリティ)を実現できるか、SDGs/ESG経営の 「質」が問われるようになっています。

鍵はSDGs/ESGルールの戦略的活用(ダイナミック・コンプライアンス)

 環境・社会課題の解決を企業価値の向上にもつなげるための重要な鍵は、ダイナミックなSDGs/ESGルール形成のプロセスを分析し、そのルールを戦略的に活用することです。
 近年、非常に速いスピードで、様々なSDGs/ESGに関するルールが形成されており、ルールの流動化が生じています。注意が必要なのは、企業活動に影響を与えるルールは、国内の法規制に限られないことです。企業活動の国境を超えた環境・社会への影響を生じる中、海外の政府は、様々な手法により、自国のルール をその法域外の企業活動にも適用するようになっており、ルールの国際的な交錯が生じています。 さらに、国際規範から、調達基準、投融資基準、契約条項,規格・認証、ガイドライン、キャンペーン・イニシ アチブなどのソフトローに至るまでルールの多様化も生じており、取引ルールにも組み 込まれています。このようなルール形成を担う労働者・地域住民・消費者・NGO・企業・投資家など様々なステークホルダー等の動向が企業活動に多大な影響を与えています。
 このようなルールに受動的に対応するばかりではなく、より能動的にルールの実践を率先している状況を開示し、またルール形成にも関与することによってこそ、企業が直面するリスクを管理し、機会を創出することができます。従来両立することが困難であった環境・社会課題の解決と企業価値の向上を両立する余地が格段に広がります。
 当職は、このような取組を、従来の法令遵守とは異なる、法務担当者・法律実務家のみならずすべてのビジネスパーソンにとって重要な概念として、「ダイナミック・コンプライアンス」として提唱しています。

SDGs/ESG経営において押さえるべきステップと要素とは

 ステークホルダー資本主義時代のSDGs/ESG経営においては、企業価値の創造に加えて、環境・社会価値の創造をも目指し、これらを両立するための組織的基盤としてのガバナンス強化を意識する必要があります。その観点から、以下の3つのステップ5つの要素を押さえることが重要と考えます。

ステップ1 環境・社会価値の提供:企業活動のステークホルダーへの影響に関して両面的に対応する
負の影響の対処として(1)サプライチェーンDD(人権・環境デュー・ディリジェンス)、正の影響の促進として(2)SDGsインパクト管理を実施することが重要となります。
ステップ2 企業価値の創造:SDG/ESGリスクを管理しかつ機会を実現することを通じて企業価値を向上する
(3)非財務情報開示を積極的に行い、かつ(4)ESG投融資/サステナ ブルファイナンスを活用することが重要となります。
ステップ3 ガバナンスの改革:組織的な基盤として企業のガバナンスを強化する
(5)サステナブルガバナンスを構築することが重要となります。

 環境・社会課題の解決を企業価値の向上につなげるためには、以上のいずれのステップ・要素においても、SDGs/ESGルールを戦略的に活用する「ダイナミック・コンプライアンス」の視点が重要です。

「重要概念・用語・法令で学ぶ SDGs/ESG経営とルール活用戦略」のご紹介

 SDGs/ESGに関する多くの概念・用語・ルールは、外来の英文字・カタカナ語でかつ抽象的なものが多く、わかりにくい状況です。日々新しい概念・用語・ルールが次々と生み出されている中で、それぞれがどのような関係にあるのか理解が困難な場合もあります。
 拙著「重要概念・用語・法令で学ぶ SDGs/ESG経営とルール活用戦略」(商事法務 2022年5月出版)では、SDGs/ESG経営に関わる最重要な概念・用語・法令を、上記のSDGs/ESG経営のステップに沿って、網羅性とストーリー性を持ってわかりやすく解説することを試みています。ルールを活用しながら環境・社会価値と企業価値双方を実現するための実務的な工夫も可能な限り具体的に説明するように心がけました。
 本書が、皆様におかれてそれぞれの経験・役割に応じた「SDGs/ESG経営」や「ルール活用戦略(ダイナミック・コンプライアンス)」を実践し、持続可能な社会の実現や企業価値の向上に貢献していくにあたっての一助となることを願っております。

<主要目次>

第1部 総論 SDGs/ESG経営における重要概念・ルール・視点
SDGsの概念・ルールと企業への影響
ESGの概念・ルールと企業への影響
SDGs/ESGルールの戦略的活用-ダイナミック・コンプライアンス
SDGs/ESG経営実践のための重要ステップ
第2部 各論 SDGs/ESG経営の実践ステップと関連ルールの動向・活用
第1章 サプライチェーンDD(人権・環境デュー・ディリジェンス)
第2章 SDGsインパクト管理
第3章 非財務情報開示
第4章 ESG投融資/サステナブルファイナンス
第5章 サステナブルガバナンス
第6章 個別分野(環境・労働・人権・腐敗防止・地域経済)の重要概念・ルール
第3部 SDGs/ESG経営とルール活用戦略の実践方法
  Q&AでわかるSDGs/ESG経営における実務上の工夫
事例を通じたステークホルダー対応の実践手法

<関連活動(執筆時点)>

・日本弁護士連合会 弁護士業務改革委員会幹事 CSRと内部統制プロジェクトチーム副座長
・国際法曹協会(IBA) ビジネスと人権委員会 副委員長
・第一東京弁護士会 環境保全対策委員会 委員長
・OECD責任ある企業行動センター・コンサルタント(2020-2021年)
・外務省「ビジネスと人権に関する行動計画に係る作業部会」構成員(2019-2020年)
・日本貿易振興機構 SDGs研究会委員(2020-2021年)
・東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会「持続可能性に配慮した調達コード」通報受付窓口に係る助言委員会委員長(2021年)
・2025年日本国際博覧会協会「持続可能な調達 ワーキンググループ」委員
・海外贈賄防止委員会(ABCJ) 運営委員
・ビジネスと人権ロイヤーズネットワーク(BHR Lawyers) 運営委員
・CSOネットワーク 評議員
その他各種企業のサステナビリティ委員会委員、サステナビリティ関係のアドバイザー、ステークホルダーダイアローグの社外有識者、社外役員なども歴任。
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