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日本企業の経済制裁コンプライアンス課題の対処ー米国OFAC規制の域外適用にいかに対応するか



 日本政府は、外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づき、金融制裁措置貿易制裁措置を課しており、企業・金融機関は、これらの経済制裁規制に基づく資金移動・貿易の制限を遵守する必要があります。このような経済制裁は、国連安保理決議、欧米との協調又は独自の措置に基づき実施されています。

 一方、米国政府は、外交・安全保障上の目的から、より積極的かつ広範に、独自の経済制裁措置を課しています。このような経済制裁プログラムは、主に財務省の外国資産管理室(OFAC)により運営されていることから、OFAC規制と呼ばれています。米国OFAC規制は、主に米国人に適用されるものですが、①非米国企業に対する域外適用、②非米国企業に対する二次的制裁、③契約条項への組み込みなどを通じて、日本企業にも非常に大きな影響を与えています。

 日本企業・金融機関は、外為法の遵守に加えて、米国OFAC規制を含む海外の経済制裁規制のリスクに対応するために、経済制裁コンプライアンス態勢の強化が求められています。経済制裁コンプライアンスにあたっては、制裁リスクの高さに応じて、制裁対象国・制裁対象者との関係性の有無を確認する経済制裁デューディリジェンスを実施することが重要です。

 金融庁が発表したマネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン(AML/CFTガイドライン)でも、各所において、各国の経済制裁規制のコンプライアンスの重要性が強調されています。

 経済制裁コンプライアンスにおいて求められるリスクベースのデューディリジェンスは、従来の日本企業のチェックリスト方式のコンプライアンス実務とは異なる部分があり、多くの日本企業が実務上の課題に直面しています。また、米国と中国の間の緊張関係の高まりの中で、日本企業が、その間で挟まれ対応に苦慮する事態も生じています。とはいえ、経済制裁対応は、日本企業になじみの深い国内の反社会的勢力対応と実務上類似する点も多く存在します。そのため、新たな対応をゼロから行うよりも、従来の実務を基礎としつつ、規制の異同や地政学上のリスクなどを考慮して、さらに発展していくことが有効です。

 経済制裁・輸出管理の国際専門誌World ECR2021年3月号の特集記事の一つとして掲載された拙稿"Addressing sanctions compliance challenges for companies in Japan"(日本における企業の経済制裁コンプライアンス課題の対処) は、上述のような日本国内の経済制裁規制や米国OFAC規制の日本企業への影響と課題について分析した上で、日本政府・企業の経済制裁コンプライアンス対応の現状や今後の対応のあり方について解説を行ったものです。

 当職は、海外の経済制裁の専門家とも連携し、かつ法律・外交などの多角的な観点からリスクを分析しながら、様々な業種の企業・金融機関の皆様の経済制裁コンプライアンスをサポートさせていただいております。 


<関連活動>

  • 国際法曹協会(IBA)2020 Virtually Together "Regulation in the global context and the impact on companies in the Asia Pacific Region"スピーカー

  • 「グローバルコンプライアンスの実務」(金融財政事情研究会 2021年)

  • 「トランプ政権下の OFAC 規制執行強化にみる経済制裁規制コンプライアンスの最前線」(ビジネス法務 2019年6月号)

  • 「<Trend Eye>経済制裁規制の域外適用にどう対応するか」(ビジネス法務2016年4月号巻頭記事)

  • 「FinTech・仮想通貨におけるマネロン・反社リスクの所在ー諸外国の実例や規制動向を踏まえた考察」(旬刊商事法務No.2133 2017年5月5・15日合併号)

  • 「グローバル時代における反社会的勢力対応(上)(下)―グローバル暴力団排除条項の導入に向けて」(NBL991・993号 共著)

  • 「オバマ暴排大統領令と東京都暴排条例―日本の暴排と世界のボーハイのシンクロナイゼーション」(NBL966号 共著)

  • 経済産業省「郵便物受取サービス業の犯罪収益移転防止法対応に係るガイダンス」検討会委員(2019年)

  • 早稲田大学日米研究所 招聘研究員(2010年~現在)

  • 在ワシントンDC Akrivis Law Group顧問(2021年~現在)

  • 米国フレッチャー法律外交大学院 国際法学修士課程修了(2010年)

  • その他関連セミナー・講演・社内研修など多数。





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