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SDGs・ESGリスクの管理・開示の実務


SDGsが企業にもたらすチャンスとリスク

2015年に国際連合で採択されたSDGsは、環境・社会分野における17の目標と169のターゲットから構成されています。

 SDGsの特徴は、その目標がエネルギー(目標7)、経済成長・雇用(目標8)、技術革新(目標9)、都市(目標11)、消費・生産(目標12)など企業活動に密接関連していることです。 特にSDGsの目標17は、SDGs達成に向けたステークホルダー間の連携を規定しています。 SDGsが「共通言語化」している現在、企業がSDGsを本業に取り込み環境・社会課題の解決に資する製品・サービス・技術・プロセスを提供できれば、市場の開拓・拡大やプロジェクトの受注などのビジネスチャンスにつながる可能性があります。

 一方、労働(目標8)、サプライチェーン(目標12)、環境(目標13~15)、腐敗防止(目標16)などに関するSDGsの目標が企業の自主的な取組に委ねているだけでは達成できない場合には、取組を義務付ける法規制が導入・強化される可能性もあります。例えば、近年の働き方改革関連法やプラスチック規制の導入もSDGsと密接関連しています。

SDGs・ESGをめぐるルール形成

欧米各国を中心に,企業のサプライチェーンを通じた環境・社会対応が法的義務ないしそれに準じる開示義務にまで引き上げられつつあります。

 また、国内外でESG(環境・社会・ガバナンス)に配慮した投融資が急拡大しています。日本国内でもスチュワードシップコード・コーポ―レートガバナンスコードが改訂され、サステナビリティの考慮がコードに組み入れられています。さらに、EUを中心に、投資家に対しても、サステナブルファイナンスに関する規制が導入されています。

このようにサプライチェーン管理やESG投融資が拡大している現在、企業がSDGsに逆行する行動をとった場合、顧客からの取引停止や投融資の引き上げなどを受けるリスクも生じています。その結果,日本企業にも、環境・社会問題への対応及びそれを支えるガバナンスの問題の発生により企業価値の毀損が生じるリスク(「ESGリスク」)が急速に高まっています。

 一方、企業がESGリスク管理の状況などの非財務情報を顧客や投資家などに対し効果的に開示できれば、取引先としての競争優位性や投融資先としての魅力を高め、企業のオポチュニティの維持・獲得につながります。

ステークホルダー資本主義

 2020年1月に開催された、世界各国の企業経営者が参加する世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)では、株主資本主からステークホルダー資本主義への転換が議論の中心となりました。同会議で採択されたダボス・マニフェストは、企業が株主だけではなくステークホルダーのためのものであることを明記した上で、環境・社会課題対応に関するコミットメントが明確にされました。このようにSDGs・ESG課題への対応は、国際的には、コーポレートガバナンスにおける主要課題となりつつあります。

コロナ危機のSDGs・ESGへの影響

 昨今の新型コロナウイルスの拡大を通じた企業活動の停滞は、労働者を含むステークホルダーの人権に深刻な影響を生じさせています。企業には、ステークホルダーへの影響を緩和するための配慮や工夫が、ESGリスク管理やSDGsへの貢献のみならず、危機に対するレジリエンスを高める観点からも期待されており、多くの機関投資家が企業に対しESGのS(社会)の側面への対応に注目しています。

SDGs・ESGリスクの管理・開示方法

 以上のようなSDGs・ESGをめぐるルール形成の動向をふまえて、SDGs・ESGリスクを適切に管理・開示するためには、①インパクトアセスメントの実施、②シナリオ分析、③リスクベースアプローチの採用、④サプライチェーンの管理、⑤苦情処理メカニズムの整備​、⑥内部統制システムの強化のような取組を検討することが有益です。

 いずれの取組にあたっても、ステークホルダーとの対話や専門家の活用が重要です。

 当職は、国内外の様々な専門家や団体と連携しながら、企業・金融機関の皆様が効果的にSDGs・ESGリスクを管理・開示し、企業価値の維持・向上にもつなげていくことをサポートしています。

<関連活動>

  • 日本弁護士連合会 弁護士業務改革委員会幹事 CSRと内部統制プロジェクトチーム副座長(2015年~現在)

  • 国際法曹協会(IBA) CSR/ビジネスと人権委員会オフィサー(2017年~現在)

  • 日本貿易振興機構 SDGs研究会 委員(2018~2019年)

  • 外務省 ビジネスと人権に関する国別行動計画に係る作業部会 構成員(2019年~2020年)

  • 上智大学法学部 講師(2016年~隔年 環境CSR担当)

  • 青山学院大学法学部 講師(2019年~現在 ビジネスと人権担当)

  • 日本貿易振興機構 アジア経済研究所 政策提言研究会 委員(2015年~現在)

  • 責任ある企業行動及びサプライチェーン研究会 事務局・委員(2018年~現在)

  • 一般財団法人 CSOネットワーク 評議員(2020年~現在)

その他各種企業のサステナビリティ委員会委員・社外有識者・社外役員なども歴任。

<関連著作>

  • 「SDGs・ESG関連ルール形成の動向と弁護士の役割―日弁連ESGガイダンスの意義と活用方法を含めて」(自由と正義2020年7月号)

  • 「SDGs・ESG リスクに関する法規制の動向とその管理・開示実務─コロナ危機のSDGs・ESGへの影響と対応を含めて」(資料版商事法務2020年6月号)

  • 「日弁連ESGガイダンスの解説とSDGs時代の実務対応」(商事法務、ESG/SDGs法務研究会編)

  • 「ESG関連リスクの管理・開示のあり方-CGコード第2章への対応を視野に-」(旬刊商事法務No.2146・No.2147 )

  • 「会社法務で求められるサステナビリティ戦略-オリンピック調達・ESG投資を巡る実務動向を踏まえて」(第一法規 会社法務A2Z 2017年5月号特集)

  • 「グローバル時代のCSR法務戦略-CSR実務のパラダイムシフトと企業価値へのインパクト」(証券アナリストジャーナル2014年8月号)

  • 「サプライチェーンにおけるCSR法務戦略(上)(中)(下)」(NBL1001・1002・1003号、2013年 共著)

  • 「サプライチェーン・インベストメントチェーンにおけるCSR条項の活用」(自由と正義2015年12月号特集、2015年)


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